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今月の詩
みなみのかぜコンサートのパンフレットに
毎月あたらしい詩が載っています。
施設長の津留清美がその日のために書いたものです。
出演者の皆さんや楽しみに来られるお客様や、
それから来られない方にも、届けたい言葉が
あります。
7月の詩
6月の詩 沈黙と土器
5月の詩 朝の草いちごジャム
4月の詩 闇
2月の詩 「松の樹の精霊」 〜「尾上の松」に寄せて
1月の詩 「Exile」
12月の詩 大塚雄子写真作品展の作品に添えて
9月の詩 タイトルは 台風が来る でした。
8月の詩は 落語会に合わせていつもとちょっと違います、
詩(噺)のタイトルは 川下り でした。
7月の詩は 古木のうろ でした。
6月の詩は 「まぼろしの」でした。
第100回目を数えた5月の詩は、「百」でした。
大地震から2年が過ぎたこの4月の詩は「不安な道標」でした。
3月の詩はビートルズの歌に寄せて
2月の詩は「見えない貧しさ」でした。
「見えない貧しさ」
作:津留清美
よその家庭の貧しさなど外から見た目ではわからない
父は博打好きで、見栄張りで
ない金もつくりだして他人にはおごるのだった
そとづらの良さが災いし弟の保証人に立って倒れ
家一軒分の大きな借金を背負い込むことになる
妻と幼い子らは社宅暮らし
部屋の板壁には質素倹約と書かれた紙が貼られた
後年、母が亡くなり遺品を整理していると
推敲を重ねた手紙の下書きが出てきた
机は子どもの教育道具です
どうかこれだけは残しておいてください
家財道具いちいちに赤紙が貼られた日のその後のことだ
母がその下書きを捨てずにいたことを
胸深くひそかにしまい込む、いまも
1月の詩は「利休の尺八」でした。
「利休の尺八」
作:津留清美
秀吉の小田原攻に付き従った利休は、箱根湯
本で伊豆の韮山竹を取り寄せ、逆竹寸切の花
入れを作った。名付けて「尺八」。献上され
た秀吉も気に入り愛蔵したが、後の利休死罪
にあたり、怒りて打ち捨てた。それをひそか
に拾い集め継ぎ合わせたのが今井宗久。幾星
霜を経、思いを伝える花入れが残されている。
どこにもありそうな真竹の根っこが
どこにもないものになるために
ひとの手と息であたためられ、
喜び、かなしみとともに
使い込まれなじんでいく
使われないまま捨てられれば、
割れ裂け朽ち忘れられていくだけ
拾い集め継ぎ合わせどうにか
もとのように直し、祈るように
ふたたび魂を吹き込む
竹も切られたぐらいでは死なないし
一人では何もできないとしても
壊れたものは壊れたなりに美しく、助けたり
助けられたりしながら新しい命を生き始める
12月の詩は「贈りもの」でした。
「贈りもの」
作:津留清美
橋の上に黄色いイチョウの葉
だれが運んできたのだろう
とおいどこから やってきた
風よ風よ 教えておくれ
乾かぬ涙が あるのなら
濡れた頬を 受け止める
大きな胸は どこにある
風よ風よ 教えておくれ
貧しさと寒さのなかで
差しだすものはなにもない
愚かな私は泣くことしかできぬ
枯れぬ涙があるのなら
枯れぬ涙が 贈りもの
生きていることの 宝のような